1、フグOtx2遺伝子座約70kbに渡ってトランスジェニックマウスを作製し、シス領域の有無を解析したところ、1.1kbゲノム断片がマウス胚臓側内胚葉の発現を担う活性を持つこと、他の脊椎動物種間で保存された塩基配列が発現に必須であることを明らかにしてきた。今年度は、フォークヘッドファミリー転写因子であるFoxa2が、Otx2遺伝子の保存されたシス配列に結合すること、その発現は、Otx2発現と一致することを明らかにした。実際、Foxa2欠損マウスでは、Otx2発現が失われ、Foxa2を過剰に発現させると、その発現が異所的に認められた点から、Foxa2がOtx2の発現を直接支配していることを示した。更に、前後軸決定におけるFoxa2の機能を検討するため、Foxa2欠損胚を解析したところ、Otx2欠損胚と同様に本来前方へと移動すべき臓側内胚葉細胞が遠位に留まり、Otx2の標的遺伝子であるDkk1の発現も失われていた。以上の結果から、Foxa2がOtx2の発現を担っていることが強く示唆された。2、初期原条期マウス胚ではβ-cateninの発現が前方で低下し、後方で昂進することを明らかにしてきた。今年度は、前後軸極性化異常をしめすFoxa2欠損胚において、β-cateninの発現を解析したところ、Otx2欠損胚同様、軸に沿った非対称なβ-cateninの分布が失われていた。しかし、Foxa2欠損胚は、神経胚期には一過的に前脳が形成される。この矛盾を明らかにするため、前方中内胚葉マーカーを解析したところ、Otx2欠損胚では、認められないDkk1の発現が、Foxa2欠損胚では、昂進していた。以上の結果から、Foxa2ホモ変異胚において、前脳形成に必要なβ-cateninの低下は、異所的なDkk1発現によってもたらされていることが強く示唆された。
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