炎症性腸疾患(IBD)は近年急激な患者数の増大が見られる重篤な疾患である。しかしながら、その原因は不明であり有効な治療法も確立されていない。我々がT細胞活性化機構の解析過程で作製したOX40L遺伝子導入マウスはC57BL/6系統依存的にIBDを自然発症する。従って、同マウスはIBD発症責任遺伝子を検索する上で極めて有用な疾患モデルである。既に、感受性系統(C57BL/6)と抵抗性系統(BALB/c)の交配マウス339匹を用いた遺伝子連鎖解析を行い、IBD感受性遺伝子座を3カ所同定した3カ所の炎症性腸疾患(IBD)発症関連遺伝子座を特定した。その中の一カ所は、その部位の遺伝子型と疾患発症の有無の相関がQTL解析でLod score=7.4と極めて有意であった。さらに、同部位はヒトIBD感受性遺伝子座として報告されている部位のひとつと完全に相同であった。その部位に焦点を当てて解析を進め、同部位の候補遺伝子を70個に絞った。既に、それら候補遺伝子の中で、C57BL/6系統におけるmRNA発現がBALB/cを含む5つの疾患抵抗性系統の発現に比べて5分の1に減弱しているものを見出した。同遺伝子は受容体型タンパク質をコードしており、疾患発症と同遺伝子SNPとの相関が、単点解析(X^2検定)でp=4.6x10^<-8>であった。以上より、同遺伝子発現減少がマウスIBD発症に関与する可能性が示唆された。
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