研究概要 |
近年、ヨーロッパ系集団において、I型インターフェロンや炎症性サイトカイン産生経路において重要な転写因子であるinterferon regulatory factor 5 (IRF5)遺伝子に存在する、1)スプライス・アイソフォームの産生に関連する第1イントロン多型(rs2004640)、2)翻訳領域の10アミノ酸挿入、3)poly Aシグナルを改変する3'非翻訳領域(UTR)多型(rs10954213)の3個所すべてを含むハプロタイプが全身性エリテマトーデス(SLE)に関連することが報告された(Graham et al., PNAS 2007)。本年度、われわれは、日本人SLEにおけるIRF5多型の関連について検討し、以下の知見を得た。 1.第1イントロンのSNP rs2004640については、日本人集団においても、関連が確認された(Tアリル陽性率SLE58.8%,健常者49.8%,OR1.44,P=0.048)。 2.3'UTRのSNP(rs10954213)については、日本人集団では関連が検出されなかった。 3.rs2004640下流に検出されたSNPにおいて、マイナーアリル頻度がSLEにおいて有意に減少していた。また、rs2004640の上流に検出された、1個の新規SNPを含む2個のSNPによるハプロタイプが、SLEに有意に増加していた。 4.上記の計5SNPにより、5種類のハプロタイプ(ht1-5)が形成され、ht3がSLEにおいて有意に減少(P=0.0029)し、ht5が増加していること(P=0.026)が見出された。 以上の結果、日本人集団においても、IRF5とSLEとの関連が確認された。さらに、ヨーロッパ系集団において原因的に寄与することが示唆されているrs2004640やrs10954213は、日本人では一義的な関連を示さず、むしろそれ以外の3個所のSNPの寄与が大きいことが示唆された。
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