麹菌A.oryzaeのゲノム解析から見出されたタイプI型ポリケタイド合成酵素PKS遺伝子について、そのコードするPKSのドメイン構造を確認し、芳香族型Ao11〜113の13種、還元型Ao21〜212の12種、ペプチド合成酵素とのハイブリッド型Ao31〜33の3種に分類し、A.oryzae全PKSの発現、機能同定を進めることとした。また、A.fumigatusや、Aspergillus terreusのゲノム情報から、生理活性二次代謝産物の生合成遺伝子クラスターを検索し、その候補となる遺伝子領域をいくつか見出した。一方、ゲノムプロジェクトは進められてはいないものの、その生合成にDiels-Alder環化の関与が考えられており、化学構造的にも、生理活性からも興味深い還元型ポリケタイド化合物solanapyroneを生産するジャガイモ夏疫病菌Alternaria solani、および、マクロラクトン環に芳香環が融合した特徴的な構造と抗ガン作用などの活性を持つradicicolの生産菌であるPenicillium luteo-aurantiumよりPKS遺伝子を検索し、各々4種、3種の新規PKS遺伝子断片をクローニングし、そのPKS全長塩基配列を決定した。 麹菌A.oryzaeの芳香族型PKS13種(Aoll~113)、還元型PKS12種(Ao21~212)、ペプチド合成酵素とのハイブリッド型PKS3種(Ao31~33)を糸状菌発現ベクターpTAex3RにGateway法を用いて導入し、各PKSの発現プラスミドを構築した。Ao11の発現プラスミドpTA-Ao11をA.oryzaeに形質転換・導入し、その主生産物が芳香族ナノケタイドのtopopyroneとそのPKS反応副生成物であるhaematomoneであると同定した。
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