A. oryzae RIB40株のゲノム解析から見出されたタイプI型PKS遺伝子について、芳香族型Ao11〜113の13種、還元型Ao21〜212の12種、ペプチド合成酵素とのハイブリッド型(PKS/NRPS)Ao31〜33の3種について順次、発現用宿主であるA. oryzae M-2-3株に形質転換・導入しているが、今年度は新たにAo15、17、18 PKSについてその生産化合物を同定した。その結果、Ao18 PKSは、ナフトピロンYWA1の合成酵素であること、Ao15 PKSはオルセリン酸合成酵素であることが判明した。また、Ao17形質転換体は、2つの主生成物を与えたが、これらはいずれもヘプタケタイドであるcitreoisocoumarinとalternariolであると同定した。両者は、炭素鎖長は同じであるものの閉環様式が全く異なっている。また、後者は、Alternaria属糸状菌の生産するマイコトキンとして報告されている化合物であり、A. oryzaeがその生産能を潜在的に有することが確認された。RIB40株には全長PKS/NRPSをコードするAo31〜33に加え、一部欠失のあるPKS/NRPS遺伝子が存在しているが、その周辺遺伝子情報の検討から、本来はシクロピアゾン酸(CPA)の生合成に関わっていたことが推定された。そこで、RIB40株の配列をもとにCPR生産菌A. flavusのゲノムデータベースを検索し、CPA生合成に関わると思われる遺伝子クラスターを見出した。これを確認するため、A. flavasの対応するPKS/NRPS遺伝子を上記Ao PKSの発現と同様にして、A. oryzaeで発現したところ、CPA生合成前駆体の生産を確認した。現在、A. oryzae以外の菌株のポリケタイド生合成遺伝子についても解析を進めている。
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