全長濃縮ヒトcDNAライブラリーのデータベースを用いてバイオインフォマティックス解析を行い、構造上分泌性蛋白をコードし小分子量ペプチドにプロセシングされると推測される遺伝子配列のヒト組織での発現を確認して、それら遺伝子由来のペプチドを化学合成して培養細胞における細胞内応答をスクリーニングすることによって新規生理活性ペプチドを同定する新手法を考案した。本研究課題においてはその探索プロセスに改良を加えながら、同定したペプチドの生理活性、物理化学的性状の解明も行うことにより、本手法を確立する努力を継続しつつ、新規生理活性ペプチドの探索を行った。その結果、本手法によって始めて同定したペプチドであるサリューシン-βがきわめて特徴的な物理化学的特徴を有するために、古典的な生理活性ペプチドの同定法や最近の主流とも言える手法であったオーファン受容体を用いた同定法で発見することは困難であったことなどの事実が明らかになりつつある。このような手法で発見した新規ペプチドが、ヒトの体液中に存在する内因性ペプチドと全く同一の分子存在様式であるかどうかなど、検討しなければならない課題もあるが、逆に、内因性ペプチドであるかどうかに関わらず、強力な生理作用と安全性が確認できればペプチド医薬・ペプチド抗体医薬への直接の応用が可能であるため、そのような観点からの新規ペプチド探索法の完成を試みている。実際、ペプチドの有用な作用による医薬品への応用に加えて、ペプチド測定により新たな診断法を提供する技術などが開発され、2件の特許出願に至った。
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