研究概要 |
本研究では、特発性心筋症、特挙性不整脈、心筋梗塞などの難治性心疾患の発症ないし進展に関連する遺伝子群を同定し、それらの機能解析を通じて病態形成機構を解明するとともに、その知見に立脚した治療戦略の開発を目的とする。本年度の主な研究成果は以下のとおりである。1.昨年度までに網羅的マイクロサテライト解析によって見出したMI-1座内の遺伝子AについてのSNP解析から、プロモーター領域のSNPが心筋梗塞と関連することを見出していたが、本年度は患者一対照数を増やして(患者630-対照1230)本SNPが冠動脈硬化症と関連することを確認し、また、別の日本人集団(患者1,110-対照2,120)および韓国人集団(患者830-対照750)でも関連することを見出した。さらに、当該SNPは遺伝子Aの転写活性に関わること、SNPによって核内因子との結合性が異なることを解明した。2.機能連関から候補遺伝子を選択する手法によって、新たに4種の拡張型心筋症原因遺伝子(FHL2,LMN4A,ILK,BMP10)および1種の肥大型心筋症原因遺伝子(OBSCN)を発見し、それぞれの変異による機能異常を解明した。3.トランスジェニックマウスの系を用いて心筋細胞のCa感受性を亢進することで肥大型心筋症の病態形成に至ることを見出したが、この効果にはPP1MのM110サブユニットのリン酸化制御が関わることを明らかにした。一方、PP1Mのラージサブユニット(M110,M130)とスモールサブユニット(M20,M21A,M21B)との結合特異性はサブユニット間で異なることを明らかにするとともに、それぞれの結合ドメインをマッピングした。4.高安動脈炎や慢性関節リウマチの疾患感受性遺伝子であるIKBLの機能解析を行い、これがスプライシングに関わる因子であることを見出した。
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