研究課題
1)検体の品質検定;微量生検試料からの核酸抽出に関し、動物移植がんなどを用いた予備実験から高感度チップ用RNAとして充分量を収集できる事を確認した。この検体管理、搬送プロトコールを用い得られたRNAは、約100倍の高感度を達成した新型DNAチップに十分用いることが可能であった。また実際の臨床試料のように微量でも解析における定量性が保持されていることが確認された。2)診断用遺伝子の選択;食道がん細胞で既に株化樹立されている細胞株(約50種)において、化学療法や放射線療法の感受性と発現プロファイルの関係を統合し、これら治療に対する感受性判定に重要な遺伝子群を絞り込むことに成功した。すなわち、まず培養食道がん細胞を用いる網羅的発現遺伝子解析は従来型のDNAチップにより行い、化学療法・放射線療法に伴って発現が変動する候補遺伝子群を抽出した。さらに、カスタムチップに搭載可能な遺伝子数をもとに、網羅的チップ(GeneChip)で絞り込まれた遺伝子、創薬ターゲットとして有用な遺伝子、および食道がんで特異的に発現変動する既知遺伝子について文献情報を含めて決定選択した。選別した遺伝子を用いた場合、食道がんと判別できる確立は95%と良好な値を得た。さらに食道がんの中でも転移を起こしやすい癌を判別するための遺伝子群も絞り込みを行った。その結果、約50種類の遺伝子を用いることにより、転移の判別確立として80%以上の成績が得られることが判明した。3)アレイレイアウトを設計し、スポット濃度40μM、スポット直径180〜200μmの条件でカスタムチップの作製を開始し、絞り込みに必要なデータ収集の基礎構築を行った。拡張性の高いデザインを用いることにより、食道がん生検試料の遺伝子発現プロファイル解析が有効に行えることを確認した。以上の如く、微量検体からも十分なゲノム情報を得ることが可能となり、遺伝子発現解析を基にした臨床ゲノム医療の基礎となる技術システムの開発に成功した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
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