研究課題
我々は以前にTK1761が耐熱性β-glycosidaseをコードすることを明らかにした。本β-glycosidaseの基質特異性がp-nitro-pheny1 (pNp)-β-D-glucopyranoside≒pNp-β-D-mannopyranoside>pNp-β-D-galactopyranosideであることが分かった。本研究ではTK1761のreporter遺伝子としての利用を検討した。T. kodakaraensisの無細胞抽出液にはクロマトグラフィーで分離可能な2種のβ-glycosidase活性が存在することが分かった。そこでこれら2種の基質特異性を検討した結果、片方はortho-nitropheny1-β-D-glucopyranoside (ONPgluco)およびortho-nitropheny1-β-D-mannopyranoside (ONPmanno)を加水分解する活性を示したが、ortho-nitropheny1-β-D-galactopyranoside (ONPgalacto)を認識しないことが判明した。もう一方の酵素はONPgalacto分解活性を示した。TK1761遺伝子を高発現したところ、無細胞抽出液中のONPglucoおよびONPmanno分解活性は顕著に増加したが、ONPgalacto分解活性は宿主細胞のKW128株と同程度であった。したがってONPglucoおよびONPmanno分解活性を測定することにより、TK1761はreporter遺伝子として利用できることが示された。さらにTK1761を利用して始原菌において転写と翻訳が実際並行して起こること(polarity)を初めて証明した。これは遺伝子の発現制御の観点から非常に重要な結果であり、これにより始原菌においても翻訳段階での転写調節が起こり得ることを示唆するものである。さらに薬剤耐性に基づいた遺伝子破壊系を他の超好熱菌に適用し、Thermococcus litoralisでもこの系が利用可能であることが判明した。
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