研究概要 |
Streptomyces rocheiの線状プラスミドpSLA2-L上にコードされた多くの制御遺伝子の機能を明らかにするため、様々な遺伝子破壊株を作製しphenotypeを調べた。その結果、SrrX(Orf85)が生合成するγ-butyrolactone(GB)はランカサイジン(LC)およびランカマイシン(LM)生産を正に、胞子形成を負に制御することが分かった。GBリセプターSrrA(Orf82)はGBとは全く逆に作用し、もう一つのTetR型リセプターSrrC(Orf74)は胞子形成を正に制御し、抗生物質生産には影響を与えなかった。一方、srrB(orf79)の破壊株は両抗生物質を大量生産し、胞子も正常に形成した。さらに、SARP遺伝子srrY(orf75)の破壊株は抗生物質も胞子も作らなくなった。 大腸菌で大量調製したSrrA蛋白とpSLA2-L DNAのSau3Al部分消化物を混合してSrrAの結合断片を検索したところ、制御遺伝子srrB, srrW(orf55)のpromoter領域が取得された。SrrAとSARP遺伝子srrYとの結合はgel retadation実験によって確かめられ、さらにfoot printingによってsrrY上流には2つの結合サイトが同定された。そこにはGBリセプターの結合領域に共通するパリンドローム配列が見つかった。こうして、srrX-->srrA-->srrYのシグナル伝達経路が二次代謝制御カスケードにおいて中心的な役割を果たしていることが明らかになった。 LC骨格を形成する縮合反応に関して、私たちはLkcC-KSが4回繰り返して(iteratively)使われ、残りのLkcA-KS, LkcF-KS1,KS2,LkcG-KSは1回のみ(modularly)使われるというmodular-iterative mixed polyketide biosynthesis仮説を先に提唱した。これを証明するために、3つのKRドメイン(LkcC-KR, LkcF-KR1,2)の活性中心にあるSerをAlaに、TyrをPheに置換した6種類の変異株を作製したが、これまでに期待した代謝中間体は得られていない。その原因を探るためlkcFとlkcGを融合させたところ、LCは正常に生産された。この結果は、両遺伝子が繰り返し反応に関与していないことを示唆した。また、lkcクラスターを2つに分けてlkcA-EをS.lividans染色体に組み込み、lkcF-Oをプラスミドに乗せて導入したところ、LCを生産した。これはlkcクラスターがLC生合成に必要な全ての遺伝子を備えていることを示した。これらのデータはいずれもLkcCが繰り返し使われるという私たちの仮説を支持する。
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