研究概要 |
ミレニアム・プロジェクト(高血圧等循環器疾患感受性遺伝子解析グループ)において得られた高血圧感受性候補遺伝子多型(SNP)について、周辺領域のファインマッピングや機能解析等を行い、責任SNPの同定とその影響力の推定を目指すとともに、新たな疾患パスウェイの理解と創薬シーズの創出へとつなげる。シグナル伝達系を中心とした約300個の候補遺伝子(1遺伝子あたり1SNP)から、700例ずつの高血圧/正常血圧サンプルを用いてスクリーニングされた38個のポジティブSNPのうち、14,000例の集団サンプルで有意性の確認されたSNPを対象に進める。このうち、最も強い有意性を示したSNP-1が座位する遺伝子Aについて検討したところ、周辺領域の探索により10^<-4>レベルの相関を示すSNP-2が見出されていた。集団サンプルにおける検討から、種々の交絡因子を調整しても、SNP-2は高血圧の独立した危険因子であり、1アレルあたり収縮期血圧2mmHgの増加を来した。疫学的にみて、集団平均としての収縮期血圧2mmHgは脳卒中発症2万人に相当することから、当該遺伝子多型の臨床的意義は極めて大きい。そこで本研究では、さらなる周辺領域の探索を行い、SNP-2の近傍に10^<-5>レベルの相関を示すSNP-3を、遺伝子Aの転写開始点付近により強く(10^<-6>レベル)高血圧と相関するSNP-4,を見出した。これらSNPの機能性は明らかとなっていないが、いずれも同一遺伝子上で比較的強い連鎖不平衡にあることが確認されている。今後、これらSNPの機能解析などを行うとともに、他の候補遺伝子に関しても検討を加えることで、研究目的の達成を目指す。
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