菌体(Mycobacterium smegmatis野生株、MDP1欠失株、補てん株)蛋白質を抽出した結果、MDP1の欠失によって菌体重量あたりの蛋白質の増加が観察された。この過剰発現が、MDP1の欠失により網羅的な遺伝子発現の増強によるのか、特定の蛋白質の過剰発現によるのかを明らかにするため、一次元ゲル電機泳動にて蛋白質を展開した結果、殆どの蛋白質バンドの増加が認められ、MDP1の欠失によって網羅的な蛋白質過剰発現が誘導されていることが分かった。また、特に顕著に発現してくる蛋白質バンドが3種認められた。この過剰発現蛋白質を同定するためにさらに二次元電機泳動を行い分離後、トリプシン消化を行い時間飛行型質量分析装置にて質量数を算定し、ゲノム情報を利用して同定した。その結果、過剰発現したスポットの一つは細胞壁合成に関わる酵素であることを明らかにした。 MDP1の欠失により多くの蛋白質が過剰発現することが分かった。このことは、ヒストン様蛋白質であるMDP1が抗酸菌ゲノム全般に渡って結合することで多くの遺伝子発現の抑制に関わることを示唆し、我々の作業仮説を支持している。実際にMDP1が転写を制御する遺伝子をゲノムレベルで同定するために、DNAマイクロアレイ解析を行った。 MDP1を大量に調整してアフィニティカラムを作成し、BCG(結核菌弱毒株)の菌体蛋白質中のMDP1結合性分子を網羅的に分取し、質量分析装置にて同定した。40あまりの菌体分子がMDP1に結合性を示すことが判明した。
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