本研究では、遺伝要因が強く発症に関与していると考えられる家族性非髄様癌甲状腺癌を対象として、ゲノム全域罹患同胞対連鎖解析によって我々が同定した疾患連鎖領域からの疾患感受性遺伝子の同定を試みる。本研究で感受性遺伝子が同定されれば、疾患罹患者において、その遺伝子変異の有無を調べることにより、遺伝因子の有無を調べることが可能となる。術前に遺伝子変異があることが判明されれば、術式・術後追加治療・フォローアップの方法などの適応が決定できる可能性がある。また家系内で将来発症するリスクのあるメンバーに対して、保因者・非保因者の同定が可能となる。保因者に関しては早期発見・早期治療が可能となる。本研究計画の解析試料は、医療法人 財団 野口記念会 野口病院から提供を受ける。 <今年度の成果> 連鎖領域内の遺伝子について遺伝子機能、発現情報などから候補遺伝子を選択し、144家系サンプルを用いてPCR産物のダイレクトシークエンス法によるコード領域の変異スクリーニングを行ったところ、候補遺伝子A内にFNMTC家系でミスセンス変異が集積していることを見出した。同定されたミスセンス変異のうち新規のものは、健常者106サンプルにおいて検出されないものが多い。 <今後の課題> 現在、DNAマイクロアレイを用いたゲノム全域相関解析のためのデータ収集を行っている。あわせてゲノム全域コピーナンバー解析も行う予定である。また、腫瘍組織でのゲノム構造解析、遺伝子発現解析を目的としたサンプル収集も開始した。これらにより、非髄様癌甲状腺がんの遺伝背景を明らかにしたい。DNAマイクロアレイを用いたゲノム全域コピーナンバー解析に関しては、高精度のアルゴリズムを開発している。また、これとアレイデータ評価機能、遺伝解析機能を統合した解析システムの構築を進めている(理研ゲノムセンター 情報基盤チーム、小長谷博士、長谷川氏との共同研究)。
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