研究概要 |
ヒトの思考・感情・行動様式に個体差を生み出し、社会・文化の多様性の創出に貢献するとともに、その逸脱が精神障害への脆弱性ともなりうる人格をとりあげ、神経画像学と分子遺伝学を双方向的に組み合わせることにより、人格の脳基盤と統合的に解明することを目指した。具体的には、ディメンジョナルモデルによる人格尺度(Temperament and Character Inventoryなど)、マルチモダリティ神経画像計測による脳機能・構造(struchval & functional MRI, diffusion tensor imaging, NIRS, EEG, MEGなど)、遺伝子多型(モノアミン系代謝関連、神経伝達物質受容体関連、神経成長因子関連遺伝子など)の関連を検討した。平成18年度は、神経画像と採血のサンプル収集は、MRI(N=180)、MEG(N=50)、NIRS(N=60)と順調であり、モノアミン系代謝関連、神経伝達物質受容体関連、神経成長因子関連遺伝子などのSNP解析を進めた。MRIについて、VBM法を用いて損害回避傾向(harm avoidance)との関連を検討したところ、海馬体積と損害回避傾向に有意な負の相関を認めた(Yamasue et al., Cereb Cortex, in press)。また、協調性との関連については、社会的認知をつかさどる脳部位との有意な正の相関を認めた。またこれらの相関は、男女間で有意な差を認めた。これらの結果から、人格特性の背景をなす遺伝子多型と脳形態・機能の関連について検討を進める見通しをえた。
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