研究課題
我々は、平成17年度研究成果として、パーキンソン病患者では、反復経頭蓋的磁気刺激法(rTMS)によって誘導される運動皮質可塑性が低下していることを報告した(Ueki et al.,2006)。平成18-9年度では、この研究テーマを発展させ、rTMSとMRIの併用法という新しい手法を用いて、運動皮質だけでなく、基底核-皮質ループの可塑性を解明しようとしている。BOLD信号変化を検出する通常のfMRIではなく、臨床にも応用されているMRI拡散強調画像法(DWI)によって、脳の可塑的変化を非侵襲的に解明する手法を開発中である。DWIは、細胞内水分子の拡散運動の程度を測定して脳細胞内の変化を評価する特徴がある。我々はこのDWIの特性に着目し、脳内水分子拡散能の変化を通してrTMSによる可塑性変化(低頻度の1Hz刺激では刺激部位の活動性が抑制される)を可視化できるか検証した。rTMSによるヒト脳内の水分子の分布パターンの変化を検出するため、健常人に対して、左一次運動野に10分間のrTMS(1Hz)を施行し、前後にDWI画像を撮像した。脳機能画像統計処理ソフトSPM2を用いてrTMS前後を比較した。一次運動野およびその投射部位にrTMS後も持続性のDWI信号変化を認めた。その分布は一次投射部位よりもむしろそれを介した投射部位に大きな変化を認める傾向があった。この結果で示された脳細胞内の水分子の動態変化が神経可塑性のどのようなメカニズムを反映しているのかについては今後の検討が必要である。
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Exp.Brain.Res 178
ページ: 135-140
J.Neurosci 26
ページ: 8523-8530