研究課題
劣性遺伝性の運動失調症を呈するrockerマウスはP/Q型電位依存性Ca^<2+>チャネル(Cav2.1)のリピートIIIのS5-S6間の1310番目のトレオニンがリシンに置換されており、小脳プルキンエ細胞の樹状突起の枝分かれが少ない(Zwingman, et al.(2001)J Neurosci 21,1169-1178)。また、小脳プルキンエ細胞の急性単離細胞体標本ではwild-typeに比べrockerマウスの電流密度が約70%に減少している(Kodama et al.,(2006)Eur J Neurosci 24,2993-3007)。今年度の研究ではα_<1A>サブユニットに変異を導入しα_2/δとβ_4サブユニットとともにBHK細胞に発現させ、パッチクランプ法を用いてCa^<2+>チャネル電流を計測した。小脳プルキンエ細胞の急性単離細胞体標本と同様に、rockerマウスの変異は電流密度を減少させた。しかし、活性化や不活性化の電位依存性は変化させなかった。β_4サブユニットの代わりにβ_1やβ_2やβ_3サブユニットをBHK細胞に発現させても同様の結果を得た。従って、T1310Kのアミノ酸変異がCa^<2+>チャネル活性を低下させていることが判明した。また、rockerマウスとtotteringマウスは欠神発作を起こす。海馬CA3領域のGABA作動性IPSPがtotteringマウスで減少していることが報告されている(Helekar, et al.,(1994)J Neurophysiol 71,1-10)。totteringマウスでは神経伝達物質放出に関与するP/Q型電位依存性Ca^<2+>チャネルの活性が電流密度にして約60%に減少しているため、シナプス前膜側の要因だけでIPSPの減少は説明がつく。しかし、シナプス後膜側の要因の検討はされていない。そこで、海馬CA3錐体細胞を急性単離し、-50mVに膜電位を固定しGIBA応答を記録した。GABA応答は濃度依存的に増大し、10画に対する応答で標準化するとnormalマウスの最大応答は2.9(16日齢)、3.8(26日齢)、4.2(36日齢)、5.3(46日齢)と日齢と共に増大した。一方、46日齢のtotteringマウスの最大応答は4.2で、36日齢のnormalマウスの応答とほぼ同じであった。以上の結果から、totteringマウスのGABA9受容体が幼若マウスのGABA受容体に近い可能性が示唆された。
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