うつ病を強化学習理論における将来の報酬予測を行う脳内ネットワークの破綻したモデルとしてとらえ、その脳内機構を鯉明することで強化学習の統合的な理解を進めるとともに、強化学習モデルを用いたうつ病の機能仮説を検証することにより臨床精神医学への応用を図ることを目的とする。 強化学習理論における時間的スケールを加味した報酬予測機能を明らかにするために、報酬のバランス(大きいVS小さい)、報酬獲得までの時間的作業(短期VS長期)、獲得した報酬によるフィードバックおよび寧習などの構成要素をもった課題を作成し、健常者を対象として脳機能測定を行った。健常者を対象とした脳機能画像研究から、時間的スケール(短期vs長期)における報酬予測が大脳皮質と大脳基底核を結ぶ並列回路の異なる部分で行われていること、さらにより下部に位置する部位は短期的な結果の予測に、より上部の部位は長期的な結果の予測に関与していることが明らかになった。 平成16-19年度科学研究費補助金(特定領域(統合脳))を受け、「強化学習理論を用いたうつ病の機能仮説」の予備的検討を行った。これまでに複数の課題を作成し、うつ病患者と健常者を対象とし、心理行動データをサンプリングし、解析を行った。これらの予備的検討をふまえて、課題の調整を行い、中高年うつ病患者の脳機能測定に向けた課題を作成しその妥当性を検証した。
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