研究概要 |
研究の背景と目的 我々は、マウス海馬の神経回路にはNMDA受容体NR2Bサブユニットの非対称分布に基づく構造的・機能的非対称性が存在することを明らかにした。さらに、内臓に左右の逆位を示すミュータントマウス(ivマウス)の海馬スライスを用いた我々の最近の実験から、ivマウスの海馬では左右の非対称性が消失していることが明らかになった。これらの成果をもとに本研究では、多様な実験手法が適用できるマウスの特性を生かし、遺伝子解析,神経回路解析,行動解析を統合的に実施することによって、脳の左右差研究に明確な分子基盤の確立を目指す。 進捗状況 ●左右非対称な神経回路の形成に関与するシグナル分子の探索 DNAマイクロアレイを用いて野生型マウスとivマウスの海馬における遺伝子発現の差を解析した結果、発現に顕著な差異があるいくつかの遺伝子の存在が明らかになった。現在、非対称な神経回路の形成に関与するシグナル分子を同定するために、DNAマイクロアレイによる解析をさらに継続するとともに、遺伝子発現の組織特異性やmRNAの定量解析等を進めている。 ●ivマウスを用いた行動解析 いくつかの行動課題を用いてivマウスの行動解析を行った。その結果、遅延交替反応課題においてivマウスは野生型マウスよりも有意に劣る成績を示した。また、Paw preferenceにも両者で違いが見られた。
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