本年は、大脳皮質の非錐体細胞のターゲットを明らかにする為に、電子顕微鏡を使った3次元再構築法により、非錐体細胞の神経終末が形成するシナプスの構造を前後ともに再構築した。FS細胞2種類、甑細胞、NG細胞と5個のDB細胞の合計9個の非錐体細胞に関して検討した結果、細胞体をターゲットにするものは全体の約半数だけであった。ターゲットのおよそ半数は樹状突起の幹の部分であった。驚く事に、皮質の抑制性神経細胞のターゲット全体の25%-50%のターゲットは棘突起という事があきらかとなった。しかも、それらの棘突起のほとんどに興奮性と思われる第2のシナプスが接着し、二重支配を受けている非常に特殊な棘突起をターゲットにしていた。次に、この二重支配棘突起のもう一つのシナプスである興奮性の求心性神経終末はどこから由来しているのかを明らかにする為に、VGLUTをマーカーにした免疫組織化学法を使って証明した。その結果、二重支配を受けている棘突起を支配している興奮性神経終末はVGLUT2陽性を示す視床由来の興奮性神経終末である事がわかった。すなわち、視床由来の興奮性の信号のごく一部(10%程度)は、皮質の非錐体細胞によって選択的に抑制されているのである。ヒゲの刺激で、この二重支配をうける棘突起の数が皮質に増える事が知られている事から、機能的に重要な働きをしているものと考える。また、神経細胞の末端への抑制も、とても重要な抑制機能を担っている事を示唆する結果であると考えている。実は、この抑制作用の方が、癲癇発作を押さえる上でより重要な働きをしているという事も報告されている。
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