研究概要 |
我々は,複数の物体が並存している雑多な環境のなかから,難なく,一つの物体をまとまりあるものとして知覚できるが,脳内では,網膜から入った視覚情報は,自動的に形,色,動き,などの属性にしたがって,各々大脳新皮質の異なる領域で分析され会散してしまう。脳はどのようにして,いったん細分化された情報を統合しているのか?本研究では,動物に,色と動きの統合を必要とする知覚判断を問うた上で,ほぼすべての視覚領野と双方向性連絡をもっている視床枕をターゲットにした電気理学的実験を行った。まず,色-動き結び付け課題(Color to Motion Binding;CMB課題)を習得した2頭のサルの行動学的解析を行った。手がかり刺激に赤または緑を呈示した場合のバー反応について,縦軸に右のバーを触った率横軸に赤のドットが,下向きの率をとると,手がかり刺激が,赤と緑で,バー反応がほぼ逆転した。また,赤のドットが上向きまたは下向きに近い場合には,触るバーが,左右どちらかに偏り,ドットが上下に混合する中立点に近くなればなるほど,バー反応の偏りは,減少した。手がかり刺激が青の場合には,ランダムドットの刺激構成(横軸)によらず,下へのバー反応は,ほぼ一定だった。また,反応時間と刺激構成の相関をみると,手がかり刺激が,赤と緑の場合は,色と動きの結びつき相関が,弱くなればなるほど,反応時間が,延長し,手がかり刺激が,青の場合には,そのような相関が認められなかった。以上の結果から,サルは,手がかり刺激によって,判断内容を変え,その判断も,色と動きの結びつきの強さに基づいていることが,客観的に担保できた。次に,このCMB課題を遂行中の視床枕ニューロン活動を,記録したところ,知覚判断を問わない条件と問う条件で,応答パターンが,大きく変化した。さらに,知覚判断の内容を反映するニューロン活動も,認められた。
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