研究概要 |
前頭前野はゴール指向的な行動制御に関わると言われているが、目標達成のための行動企画のレベル、動作企画のレベルをきちんと分けて、しかもドール達成のために複数手順の企画実行に関して運動野との違いがどの点にあるかをきちんとして比較された研究は無い。前頭前野が、与えられたゴールを達成するために行う行動順序の企画にどのように関わるかを明らかにする目的で、我々は、サルが、ゴールに到達するのにマルチステップのカーソルの動きが必要になる課題で、前頭前野から細胞活動を記録した。試行は、動物が左右の手のマニピュランダムを中立位にすると開始する。すると前方のスクリーンの格子状の迷路の中央にカーソルが呈示される。その後、1秒後にゴールが呈示され,さらに一秒後に消される。さらに一秒たつと、障害物が中央周辺にランダムに呈示される。さらに1秒後に中央のカーソルの色が緑から黄色になり、これがゴー信号となって、サルはカーソルを左右のマニピュランダムを操作してステップごとにカーソルを移動させる。手の運動と、カーソルの移動方向を解離させる目的で、我々はサルを、三つの異なる手-カーソル対応関係で課題を行えるように訓練した。細胞活動は前頭前野の背外側部から記録した。まず、我々はゴー信号の前の遅延期間の細胞活動に着目して解析を行った。すると前頭前野の細胞は、この時期たしょうらい行おうとしている1手目のカーソルの移動方向に反映する細胞以外に、将来行う2手目、3手目のカーソル移動方向を反映する細胞が見出された。しかも、それらの先読みに関わる細胞はこほぼ同時期に活動を示した。これらの将来の手順を先読みする細胞の中には、実際にそのステップの動作を行うときに再度活動が認められる細胞も存在した。すなわち実行時期には、1手1手順序に活動を示した。細胞活動は将来のカーソル運動に関しては予測的な活動を示したが、手の運動の1手先2手先3手先をどうように解析したが、前頭前野に、手の運動の予測的な活動はほとんど見出されなかった。一方で一次運動野には、手の運動に関連する細胞が多数あり、1手1手その動作の実行時に活動した。前頭前野は、順序動作の各ステップの行動結果を予測して符号化しているが、運動自身に関しては先読みは認められず、運動はむしろ一次運動野ではっきりと表現されていた。
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