研究課題
我々は最近、ヒトで心理実験を行いメタコントラストと呼ばれる視覚マスキングについて検討した。この実験では、1)視に短時間(50ms)呈示した円形グレーティング(ターゲット)の知覚が、その周囲に時間遅れを伴って短時間(50ms)呈示したリング状グレーティング(マスク)によって妨害される、2)妨害効果はターゲット呈示に対するマスク呈示の時間遅れ(SOA)が0-80msで顕著である、3)妨害効果の強さはターゲットとマスクの刺激特徴に依存し、グレーティングの傾きおよび空間周波数が一致する場合に最も強まる、4)妨害効果の刺激特徴に対するチューニングはSOAに依存し、SOAが長い(60-80ms)ほどチューニング幅が広く、短い(0-40ms)ほど鋭いことが明らかになった。これらの結果は、時間特性および刺激チューニング特性が異なる処理経路間の空間的相互作用の関与を強く示唆する。この心理実験の結果を受けて、メタコントラストの神経メカニズムを検討する目的でネコの一次視覚野において生理実験を行い、ニューロンの受容野内に円形グレーティング、受容野外にリング状グレーティングを呈示したときの反応の時間経過と、刺激特徴依存性について解析を行った。その結果、受容野周囲刺激の呈示は受容野刺激に対する反応に抑制効果を及ぼしたが、受容野に隣接した狭い範囲の周囲刺激による抑制効果はi)短潜時、ii)一過性、iii)方位選択性が弱い、iv)低空間周波数選択的、v)空間加算性を示さないのに対し、さらにその周囲の領域を刺激したときの抑制効果はi)長潜時、ii)持続性、iii)方位選択性が強い、iv)高空間周波数選択的、v)空間加算性を示すなどの特徴が観察された。これらの結果は、ヒトの心理実験の結果に対応するような時間特性、刺激チューニング特性、空間特性を異にする並列入力チャネル問の相互作用が一次視覚野レベルで存在していることを示唆している。
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