研究課題/領域番号 |
18020021
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山脇 成人 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40230601)
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研究分担者 |
岡本 泰昌 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (70314763)
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キーワード | 衝動性 / 報酬予測 / セロトニン / fMRI / 急性トリプトファン欠乏 / 過剰 / うつ病 |
研究概要 |
1. 5-HT前駆体のトリプトファン(Trp)の経口摂取量を調整し、中枢神経5-HT濃度を操作した状態で、報酬予測課題施行中の脳活動をfMRIにて評価した。その結果、Trp条件(欠乏、正常、過剰)によって、線条体内で時間スケールの減衰に関与する部位が異なることを見出した。行動的制約のないfMRI装置外で同様のTrp操作および報酬予測課題を行ラことにより、報酬予測行動に及ぼす中枢5-HTの影響を評価した結果、Trp欠乏条件において、短期・小報酬の選択率が有意に高いことが示され、5-HTの操作がヒトにおいても報酬予測行動に影響を与えることが直接的に示された。 2. 5-HT再取り込み阻害薬による抗うつ効果やTrp欠乏によるうつ症状悪化から、5-HTがうつ病の病態に関与していることは確実であり、うつ病患者では減衰係数γが小さく、長期・大報酬を小さく見積もり、短期・小報酬を選択する傾向が見られると予測される。うつ病患者(n=29)と健常対照者(n=24)において報酬予測に関する行動実験を行った。しかし、うつ病の症状としての思考制止や注意持続困難のためか、解析モデルにフィットしないうつ病患者が13名存在し、課題を一部変更し、年齢制限(50歳以下)など再設定して再度実験を遂行中である。 3. うつ病患者における報酬予測課題遂行中の脳活動についてfMRIを用いて検討した結果、うつ病患者では鯉常対照群と比較して右背外側前頭前野や背側線条体の活性低下が認められた。また、3ケ月の治療後において同じ課題をうつ病群に行わせ、治療反応性に応じて解析したところ、治療反応の良好なうつ病患者では右背外側前頭前野の活動元進が認められた。これらの結果は、うつ病では長期の報酬予測に蘭連した神経回路が機能しておらず、治療により改善したうつ病患者では、長期報酬予測に関連した回路の活動が回復することを示唆している。
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