研究概要 |
この研究では,統語的プライミング現象を手がかりに統語処理の過程を純粋に抽出し,fMRIを使用した脳機能イメージング実験を実施することで,再帰的計算能力を支える皮質構造を特定しその機能を解明することを目指している.今年度は,プライミングの脳機能計測実験の準備として前年度から実施中である日本語動詞活用形の処理に関する実験を継続し,動詞の語彙処理には側頭葉中側頭葉後部が関与し,活用形の処理には前頭葉下前頭回のBA45野が,動詞句の意味処理には47野が強く関与するという結果を得た.実験結果を論文としてまとめ,現在投稿準備中である.音声呈示された日本語の複合語を処理する際の脳機能イメージを計測する実験を実施し,側頭葉上側頭回の活動が高まっているという結果を得たため,日本認知科学会第23回大会において口頭発表した.これらの結果を受けて統語的プライミングの脳機能計測実験を開始し,現在までに約10名のデータを取得して実験を継続中である.統語的プライミングの行動実験としては,昨度までに実施した研究成果をまとめ,学術紙(認知科学:日本認知科学会)及び専門書(Communicating Skills of Intention)に掲載した.さらにプライミング効果が文処理のどの時点で生じているのかを明らかにするため,日本語かき混ぜ文の自己ペース読み時間計測実験を実施した.文中で読みの遅延が生じる箇所を正確に特定し,研究成果は国際学会(CUNY Conference on Human Sentence Processing 2007)においてポスター発表した.文処理過程の脳機能計測研究に関する情報提供を受けるため,アメリカ合衆国カリフォルニア大学サンディエゴ校の植野美枝子講師を招聘して,セミナーを実施した.
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