研究概要 |
我々の研究グループは、臨床神経学、臨床神経心理学、心理物理学、心理統計学、非侵襲脳活動計測の統合的アプローチによって感情の認知・生成・制御に関わるヒトの脳内機構を研究している。本年度の研究では若年性パーキンソン病患者では顔の表情が正常に認知されていることが確認された(Yoshimura, Kawamura et al. in press)。孤発性パーキンソン病では表情認知が障害されていることから(Kan, Kawamura et al. 2002)、両者の病巣の比較により、表情認知の脳内機構の一端が明らかになった。すなわち、孤発性パーキンソン病ではmesocorticolimbic systemとnigrostriatal systemという2つのドーパミン系の機能が低下するのに対し、若年性パーキンソン病ではnigrostriatal systemの機能が選択的に低下する。このことから、mesocorticolimbic systemと表情認知の関係が強く示唆された。また、孤発性パーキンソン病では同じmesocorticolimbic systemによって処理されている嗅覚機能も低下していた(Masaoka, Kawamura et al. 2007)。さらに、表情認知や嗅覚が孤発性パーキンソン病の前段階とされるレム睡眠行動障害患者でも障害されていることがわかった(Koyama, Kawamura et al. in press)。また、感情研究の新しい方法として片頭痛患者の視覚刺激に対する過敏性に着目し、視覚刺激に対する不快感の定量的評価方法を開発した(Koyama & Kawamura in press)。平成18年7月に京都で行われた日本神経科学学会において、ジョーンズホプキンス大学教授Argye Hillis氏を招いてシンポジウムを行い、研究成果を発表した。
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