研究概要 |
本年度は、印刷中のものも含めて5編の英文原著論文を発表した。主要なものとしては、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、痛覚認知に関与する脳部位の同定を行った研究があげられる(Qiu et al., 2006)。A-delta線維を上行する信号による鋭い痛み(first pain)に関与する脳活動部位と、C線維を上行する信号による鈍い痛み(second pain)に関与する脳活動部位の比較を行った。すると、両者に共通して活動する部位(ヒトの痛覚認知に重要な部位)は、視床、第2次体性感覚野、島、帯状回であった。また、島の前方、帯状回の一部(Brodmannの32野、8野、6野)、補足運動野前方部(pre-SMA)では、C線維を上行する信号による活動がA-delta線維を上行する信号による活動よりも有意に大きく、このような部位がsecond pain認知に重要であることを示唆する所見を得た。これは世界で初めての報告である。 他には、除痛効果の1つとして著名なgate control theoryを脳磁図を用いて詳細に解析し、その責任部位が脊髄ではなく大脳皮質であることを示唆する研究(Inui et al., 2006)、脊髄視床路の伝導には2種類があり、第1次体性感覚野に到達するシグナルは他の部位に到達するシグナルとは機能および脊髄内伝導速度が異なる事を示した研究(Tsuji et al., 2006)、実際に痛み刺激を与えられなくても心理的に痛いと感じる時には、痛み刺激を与えられた時と類似の脳活動が見られることを示した研究(Ogino et al., in press)などがある。
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