研究概要 |
本年度は3編の英文原著論文を発表した(印刷中を含む)。疼痛刺激には少なくとも2種類が存在し、各々は脊髄内においても異なる伝導速度で上行する。その速いシグナルが脳内でどのように情報処理されるかを脳磁図を用いて詳細に検討した。従来は、上肢に痛覚刺激を与えた場合の第1脳反応の潜時は170msec程度と考えられていたが、特殊な解析方法を用いることにより、110-120msec付近に小さい反応が得られることを発見した。末梢神経と脊髄を比較的速い伝導速度で上行する信号によるものと考えられる(Wang, et. al., Experimental Brain Research, 2007)。 情動と痛覚の関係は深い、実際に痛み刺激を与えられなくても、注射のような痛そうな写真を見ただけでも「心の痛み」が出現する。その時にfMRIを計測すると、実際に痛み刺激が与えられた場合と類似の脳活動が、両側半球の島と帯状回に記録された。いわゆる「心の痛み」に関連が深いと思われる興味ある所見であった(Ogino, et. al., Cerebral Cortex, 2007)。 動脈の圧受容器が痛覚認知に影響するか否かを痛覚関連誘発脳波を用いて解析した。収縮期には脳波の振幅は拡張期よりも有意に低下している事がわかり、動脈の圧受容器が痛覚認知に影響を及ぼすことが立証された。これは英国バーミンガム大学との共同研究である(Edwards, et. al., Pain, 2008)。 さらに、痛覚認知におけるposterior parietal cortex(PPC)の役割について、第1次体性感覚野と第2次体性感覚野の活動との関連を含めて詳細に解析し、現在、投稿中である。
|