記録されたニューロン(n=13)は全て中枢潜時1ms以下で応答を示し、また潜時のばらつきは小さかった(1ms)。全てのニューロンにおいて運動に応じた発火頻度の上昇が認められた。発火頻度の上昇は屈曲・伸展運動両方で認められ(p<0.01)たが、その変化は伸展運動において大きな傾向にあった。またそれらの活動電位をトリガーにして筋電図を加算(spike-triggered averaging)した結果、これらのニューロンの一部が伸筋への興奮性出力(n=5)及び屈筋への抑制性出力(n=1)をもつ事が明らかになった。またニューロン近傍への微小電気刺激(10μA以下)を行うと、ほとんどの記録部位(n=11)から複数筋への応答が誘発された。これらの結果は、記録されたニューロンの多くが運動ニューロンに直接投射する介在ニューロンである事を示唆していた。一方DR刺激による単シナプス性応答のサイズは手首屈曲運動時においては低下していたが(p<0.05)、伸展運動では変化が認められなかった。これらのニューロンの活動性は両方向への運動時に上昇していた事から、手首屈曲時における単シナプス性応答のサイズの低下は、シナプス前抑制によると考えられる。以上の結果から、I群求心神経へのシナプス前抑制は、I群求心神経の活動によって引き起こされる反射運動が随意運動と拮抗する場合に大きくなる可能性が示唆された。
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