研究課題
脳は個性ある神経細胞たちの集合体であり、それらの相互作用によって統合的な機能を発揮している。本研究では多ニューロンCa^<2+>画像法(fMCI)を用い、単一細胞レベルの解像度を保持したまま数百個のニューロン活動を同時記録し、その時空パターンを解析した。生後7日齢のWistar STラットから海馬切片を作成した。7〜14日の培養後、カルシウム指示薬のOregon green 488 BAPTAAMをボーラスで負荷した。その後、海馬CA1野のニューロン集団からニポウ板型共焦点レーザー顕微鏡を利用して、カルシウム蛍光シグナルを一斉に記録した。取得した画像の解析では、一過性カルシウム上昇をスパイク活動として認識し、ネットワークの活動パターンを再構築した。海馬CA1野における演算様式を解析するため、入力線維に局所的電場刺激を加えた。神経ネットワークへの総入力量は、受容体阻害薬カクテルによりシナプス後細胞への興奮性の入力を遮断した条件下で、入力線維の走行する放線層の蛍光変化として記録した。刺激強度を徐々に上げていったところ、活動する細胞数(すなわち出力)は、総入力量に対してほぼ線形的に増加した。この入出力関係の線形性は、gabazineを適用することにより消失したことから、自発的な抑制性入力によって形成されていると考えられる。次に、同一強度の刺激を反復して導入し、ニューロン反応の多様性を検討した。多くのニューロンは、反復刺激に対して再現性よく活動することが少なく、ネットワーク全体としても偶発レベルを超えた多様性を示すことが明らかとなった。また海馬が生みだす情報処理の流れに着目し、自発的もしくは人工的に惹起された神経活動の時空パターンが、どのようなプロセシングを受けながら歯状回→CA3→CA1へと伝播していくかを検討した結果、可塑性誘導によってスパイク情報は統合あるいは分離しながら回路を伝播することが明らかとなった。
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