デルタ2グルタミン酸受容体は他のイオン透過型グルタミン酸受容体と同様の膜構造をとるが、最近の我々の研究ではイオン透過型チャネルとして働かないことを示唆するデータを得ている。本実験では、デルタ2グルタミン酸受容体のアミノ末端ドメイン(NTD)が、デルタ2グルタミン酸受容体の機能発現に重要であり、との仮説を検証するべく実験を行っている(NTDはイオン透過型チャネルの構造に関与していない)。 もしデルタ2グルタミン酸受容体が他のグルタミン酸受容体と同様に、陽イオンを通過させるチャネルとして働いているならば、カルシウムの透過性を決定するQIRサイトはカルシウム透過型のQである。そこで、カルシウム透過性を消失させる変異(Q→R)を導入したデルタ2グルタミン酸受容体をプルキンエ細胞特異的に発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作出した。これとデルタ2グルタミン酸受容体欠損マウスをかけ合わせ、ノックアウトのバックグラウンドに変異デルタ2グルタミン酸受容体を発現するマウスを得た。もしデルタ2グルタミン酸受容体がカルシウム透過型チャネルであり、このチャネルを通るカルシウムが重要な役割を果たすならば、作出した遺伝子変異マウスはノックアウトマウスで見られるような異常が見られることが推測されるが、何の異常も見られなかった。このことから、デルタ2グルタミン酸受容体はカルシウム透過型チャネルとして働いていない可能性がでて来た。本成果は、Journal of Physiology(電子版)に掲載された。N末端の重要性を明らかにするマウス、すなわちプルキンエ細胞のデルタ2グルタミン酸受容体N末端をGluR2のN末端に変異させたマウスなど、一連の遺伝子改変マウスは現在作出中である。
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