高等視覚動物の一次視覚野では、類似した視覚反応選択性をもつニューロンが集まって機能コラムを形成していることが知られている。最近、私は、ラット視覚野スライス標本を用いて、興奮性結合がみられる2/3層錐体細胞は、他の細胞からの興奮性入力も共有しており、非常に微細なスケールの神経回路が視覚野内に埋め込まれていることを見出した。この微小神経回路網は情報処理の基本単位である可能性が高いと思われるが、ラットはコラム構造を有しないため、この構造が高等視覚動物のコラム構造に対応するのか、あるいはコラム構造の中に埋め込まれたさらに細かい情報処理単位に相当するのかは不明である。そこで、本研究では、コラム構造を持つフェレットの一次視覚野を用いて微小神経回路を解析することにより、微小神経回路とコラム構造の対応関係を調べる。今年度は、微小神経回路を同定するために必要な、ケージドグルタミン酸とレーザー光による神経回路局所刺激システムを立ち上げた。レーザーのスポット照射部位は、顕微鏡内に組み込んだ2枚のガルバノミラーでコントロールし、スライス標本上の約3mm四方の範囲を50μm刻みで特定のパターンで刺激できる装置を立ちあげた。このレーザー照射システムとケージドグルタミン酸を用いて、ラット視覚野スライス標本上のごく少数のニューロンを選択的に刺激できることを確認した。今後は、この刺激法に複数のニューロンからの同時ホールセル記録法を組み合わせて、フェレットの視覚野神経回路を解析し、コラム構造と微小神経回路の対応を明らかにする予定である。
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