研究概要 |
カテプシンBとL、カテプシンDとLの生存期間は生後14日未満で死に至るのに対して、カテプシンBとDのダブルノックアウトマウスはその多くが生後23日前後まで生存することが新たに判明した。カテプシンDL、BDのダブルノックアウトマウスではカテプシンBLダブルノックアウトマウスと同様、脳梁等において、spheroidが多数形成され、LC3陽性の顆粒状構造物が蓄積し、電顕的に初期段階のオートファゴソームと類似した構造物の蓄積が確認された。最近ドイツのグループがカテプシンBLダブルノックアウトマウスと対照群のリソソームフラクションを用いて、iTRAQ法によって変化が認められた蛋白を見いだした(Stahl, et. al.,2007,BBA)。彼らは対照群と比べてRab14、Neuron specific gene family member 1/Calcyon、Delta/notch-like EGF-related receptor(DNER)、Carboxypeptidase E、KIAA 1414が約10倍以上増加していると報告したが、いずれも小胞輸送に関わることが知られている。これらのうちRabl4、DNER、CarboxypeptidaseEに対ずる良い抗体が得られたので上記3系統のダブルノックアウトマウスにおいてそれぞれその局在を検討したところ、いずれのマウスにおいても、軸索が変性しspheroid様構造を形成している部位に強く認められることが分かった。以上の結果は、リソゾームタンパク分解酵素の欠損を伴う神経細胞においては、軸索における細胞内輸送が共通して傷害されることを示しており、軸索内でオートファゴソームが蓄積する要因は、リソソームの分解が妨げられるだけでなく、細胞体への輸送そのものが阻害されている可能性が示唆された。
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