研究概要 |
発生期の大脳皮質では、神経細胞が様々なタイプへと分化し、それに伴って各細胞の特徴となる遺伝子を発現する。我々はこれまでに、ネトリン受容体ファミリーメンバーの一つであるunc5h4遺伝子が皮質第4層特異的に発現することを見出した(Zhong, et. al.,2004)。Unc5h受容体は、netrin-1依存的に軸索ガイダンスおよび細胞生存を制御することが知られている。しかし、unc5h4についてはその役割が明らかにされていない上、それに対するリガンド分子も分かっていない。本研究では、まずin situハイブリダイゼーション法を用いて、発生期マウス大脳皮質におけるunc5h4遺伝子の詳細な発現パターンを解析した。その結果、unc5h4は大脳皮質一次感覚野の第4層に特異的に発現することが明らかになった。次に、リガンドの候補となるnetrin-1、netrin-3、netrin-4の脳における遺伝子発現パターンを解析したところ、netrin-4が大脳皮質においてunc5h4の発現パターンに類似しているだけでなく、視床においても強く発現することが明らかになった。さらに、結合解析により、unc5h4にはnetrin-4タンパク質が結合することが判明し、netrin-4はunc5h4のリガンドであることが示唆された。netrin-4がunc5h4を発現した皮質神経細胞に及ぼす効果を調べるため、in uteroエレクトロポレーション法を用いてunc5h4発現用プラスミドを導入した皮質神経細胞を分散培養下で観察した。その結果、netrin-4非存在下に比べてnetrin-4存在下では、unc5h4を発現させた細胞における細胞死が有意に減少した。以上より、発生期大脳ではunc5h4とそのリガンドnetrin-4が発現し、皮質細胞の生存に関与することが示唆された。
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