研究概要 |
マウス主嗅球ニューロン構成を明らかにするため前年度の一酸化窒素合成酵素nitric oxide synthase(NOS)含有ニューロンの解析に引き続きカルシウム結合蛋白parvalbumin(PV)含有ニューロンについて解析した。 これまで他の動物で報告されている外網状層の介在ニューロン、少数のPG cells, short axon cellsが同定できた。しかし、ラットでは稀だった内網状層にマウスではかなり多数の比較的大型のshort axon cells が並んでいた。それ以外にも外網状層に少数ではあるが比較的大型のshort axon cellsが散在していた。これらの内・外網状層のshort axon cellsは軸索を外網状層に伸ばし、その軸索分枝は主に外網状層でカラム状に分布していた。また、外網状層に存在している小型〜中型の介在ニューロンは、いくつかの共通点を有することから、ある範囲の形態的多様性を示すが同一ニューロンタイプであると結論した。光学顕微鏡レベルでの特徴は1)無軸索であること、2)一般のニューロンでは軸索初節部あるいはランビエ絞輪に特異的に見られる分子群であるbetaIV-spectrin及びsodium channel clusterが樹状突起上にパッチとして存在していることであった。しかも、この特殊なパッチは比較的細胞体に近位で、同一あるいは異なる樹状突起上に複数存在していた。この特殊なパッチはおそらくdendritic spikeの発生に関連するいわゆるhot spotsと呼べる構造であると考えられる。樹状突起のhot spotsは生理学的には海馬ニューロン等で何例か報告されているが形態学的には初めての報告である。ただし、この特殊なパッチが、生理学的に見られているhot spotsにどの程度対応するかについては、他のニューロン種を含めて今後の検討が必要である。
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