本研究では、CREBならびにNFkBを題材とし、樹状突起に存在する転写因子の調節と核移行のメカニズムならびにその生理学的意義を明らかにしていく。初年度の平成18年度は以下の課題に取組んだ 【課題1】樹状突起に存在する転写因子の神経活動に伴う細胞内局在の解析 CREB、NFκB(p65ならびにp50)に対する抗体を用い、これらの転写因子が樹状突起に存在するかを初代海馬培養神経細胞を用いて調べた。CREBは定常状態では主として神経突起と細胞体の両方に存在したが、TTXで神経刺激を遮断すると神経突起分布が優位となった。KC1、グルタミン酸の刺激により、CREB、NFkBともに核内の分布が優位に認められた。 [2]GFP融合蛋白転写因子を用いた検討 CREBならびにiNFκB(p65ならびにp50)とGFPとの融合蛋白をまずCOS-1細胞あるいは初代神経培養細胞にリポフェクション法で発現させ、[1]と同様な刺激を加えることにより核移行するか否かをリアルタイムイメージングにより調べた。YFP-CREBはTTX非存在下では主として核内に存在したが、TTX処理により突起にも分布が認められ、KC1やグルタミン酸投与によって15〜30分で核内へ移行した。一方、NFkBの分布様式はTTXの有無によらなかったが、グルタミン酸処理により核移行が認められた。 [3]転写因子の変異体を用いた検討 CREBならびにNFκBのいかなる構造が核移行に必要かを検討するために、CREBならびにNFκBの核移行シグナル(Nuclear localization signal; NLS)に変異を導入し、夫々のGFP融合蛋白を分散培養神経細胞に発現させた。CREBの分布はTTX非存在下においても、細胞体のみならず突起にも広範な分布が認められるようになった。NFκBは元々突起にも有意な分布が認められたが、NLSの変異体では細胞体より突起の分布が優位となった。 [4]転写因子核移行の分子機構の解析 [3]の実験よりNLSが刺激依存性の核移行に重要なことが明らかになったため、NLSを認識する細胞質一核輸送因子であるインポーチンが転写因子の核移行に関与しているかを調べた。 インポーチンのGFPとの融合資白を分散培養神経細胞に発現させ、神経刺激によってインポーチン自体がいかなる調節を受けているかを確認した。KC1刺激によりインポーチンαが樹状突起から核へ移行した。
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