研究概要 |
発生期の大脳皮質では、興奮性神経細胞の多くは皮質(外套)の脳室帯と呼ばれる部位で誕生して放射状に脳表面近くに向かって移動する一方、抑制性神経細胞は基底核原基(Ganglionic Eminence, GE)と呼ばれる腹側の領域で誕生し、長い距離を接線方向に移動して皮質に進入する。基底核原基は、解剖学的に内側基底核原基(MGE)、外側基底核原基(LGE)、尾側基底核原基(CGE)に分類される。我々は、脳内の任意の局所部位に由来する移動細胞のみに特異的に遺伝子導入し可視化する手法を確立して、各部位に由来する細胞の挙動を観察した結果、MGE由来細胞、CGE由来細胞、LGE由来細胞は互いに異なる挙動を示すことを見いだした。そこで次に、特にCGE由来細胞の特有の性質がどのような分子機構によって規定されるかを明らかにしたいと考えたが、これまでにCGE特異的に発現する分子は報告がないため、まずは各々に由来する細胞の挙動が異なるCGE、MGE、LGEの各領域を切り出し、DNAマイクロアレイを用いて発現解析をした。その結果、CGEに発現している分子21,024個のうち27個が、MGEやLGEでは発現が少なく(殆ど検出されず)、CGEで発現が多い分子の候補として同定された。それらについて、マウス胎児大脳半球を用いたwhole-mount in situ hybridizationによって発現を検討したところ、CGE特異的に発現する因子を2つ見いだすことができた。
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