研究課題
成体の嗅球では新しく生まれた抑制性神経細胞が既存の神経回路に組み込まれている。我々は、マウス成体嗅球の新生抑制性神経細胞の生存が、細胞が生まれて特定の時期(14-28日)の匂い入力によって左右され、匂い入力依存的な神経細胞生存には臨界期が存在することを示してきた。またこの時期は、新生神経細胞のシナプス形成期に相当していた。本研究の目的は、1.神経活動が新生神経細胞の生存シグナルとなる分子機構2.臨界期の開始と終了を規定する分子機構3.臨界期の生死決定とシナプス形成の関連を明らかにすることである。この解析のため、本年度は「既存の神経回路に新しい神経細胞が組み込まれる」ことを再現するin vitro培養系の樹立を行った。野生型マウス胎生期嗅球の分散培養で神経連絡を作らせたのち、赤蛍光蛋白を発現するトランスジェニックマウス嗅球の細胞を加えたところ、その30%程度が生存して既存の神経回路に組み込まれた。蛍光標識細胞を加えて7日後に、薬剤投与で神経活動を抑制すると、アポトーシスをおこす蛍光標識細胞の割合が増加したが、既存の蛍光陰性神経細胞にはアポトーシスを誘導しなかった。また、nestin promoter-GFPマウスと赤蛍光蛋白マウスの交配仔の嗅球からGFPを指標に抑制性神経細胞のprogenitorを単離して培養系に加えたところ、組み込まれた細胞は抑制性神経細胞の形態と成熟したスパインを有していた。以上のことから、既存の神経回路に新生抑制性神経細胞がシナプス結合して組み込まれ、神経活動を抑制すると臨界期の新生神経細胞の細胞死が誘導されるという、嗅球in vivoの現象を再現できるin vitro培養系が確立できた。今後タイムラプス観察などで新生神経細胞の入力依存的な組み込みの臨界期の分子機構を詳細に解析していくことが可能となった。
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