研究課題
ショウジョウバエの脳形成をモデルとして中枢神経を形成するメカニズムの解明を行った。1.ショウジョウバエのMushroom Body(MB)は嗅覚学習の中枢と考えられている。この構造の形成機構を明らかにするためにエンハンサートラップ系統をスクリーニングし、MBで発現のみられる約200系統を得た。また、Wntシグナルが形成に機能していることを見出した。2.眼柄の形成機構視神経は眼柄というグリア細胞の筒状の構造を通って脳に投射している。この構造が正常に形成されないと視神経の束状化が阻害されることを見出した。また、その時にFocal adhesion kinase、CdGAPr、インテグリンが機能していることを見出した。3.視覚中枢(メダラ神経節)の形成機構メダラ神経の形成は神経上皮細胞がProneural geneを規則正しく一方向に順次発現することに始まる。これは波が動いていくようであり、proneural waveと名付けた。今まで知られている神経芽細胞、神経幹細胞の形成は神経上皮細胞から、proneural遺伝子を誘導する一群のポテンシャルを持った細胞が形成され、その後に「確率論的」に神経幹細胞が誘導される、というものであった。しかしながら、本実験系では「決定論的」に規則正しく進むために今まで詳細が不明であった形成機構を明らかにできると考え、解析を進めた。Proneural遺伝子発現細胞およびそれに続く神経芽細胞では、少なくとも3種のProneural遺伝子が決まったコンビネーションで発現する。それらの様々な組み合わせの変異により、これらが、proneural waveの推進のタイミングを調節していることが明らかとなった。また、それらの異所的な発現により、神経芽細胞を誘導することができることからこれらの活性は神経芽細胞を誘導するのに十分であることがわかった。
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