研究課題
神経回路は、特異的な極性を示す神経細胞がその神経突起を介した接着により形作る複雑なネットワークシステムである。軸索は様々な軸索ガイダンス分子に導かれて伸長し、目的のターゲット細胞に到達し、複雑な神経回路を形成する。セマフォリンは代表的な軸索ガイダンス分子であり、様々な神経軸索に対し反発作用を引き起こすが、その反発作用の分子機構はあまりよくわかっていなかった。Plexinは神経軸索ガイダンス分子、セマフォリンの受容体であり、我々はこれまでに、Semaphorin 4D (Sema4D)受容体のPlexin-B1がR-Rasに対するGAP活性を有し、その活性が海馬の神経細胞におけるSema4Dによる軸索の成長円錐の崩壊に必須であることを見出した。今年度はPlexin-Blによる軸索の成長円錐崩壊において、PI3 kinase経路を負に制御しているPTENの関与を調べた。PTENはSer380がリン酸化されるとPTENのphosphatase活性が抑制されていることが知られている。そこで海馬の神経細胞を用いて調べたところ、Sema4D刺激によりPTENのSer380のリン酸化レベルが減少していることを見出した。さらにsiRNAによるPTENのノックダウンによって、Sema4DによるAktの不活性化、並びに軸索の成長円錐の崩壊が抑制されることが明らかとなった。またSema4DによるPTENの脱リン酸化には、Plexin-B1のR-Ras GAP活性が必要であった。以上の結果から、Plexin-B1はR-Ras GAP活性を介してPI3 kinaseを不活性化すると同時にPTENを活性化することで、PI3 kinase経路を抑制し成長円錐の崩壊を引き起こすと考えられる。
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