研究概要 |
まず、Ptflaを発現する細胞からどのような神経細胞が生み出されるのかに関する全脳的fate mapを作成した。また、後脳の神経上皮におけるbHLH型転写因子の発現様式(E11.5)を詳細に調べたところ、神経上皮が背側からMath1,(Ngn1,)Ptfla,Ngn1を発現する異なる部域に分けられることがわかった(括弧つきのNgn1は、後脳の吻側尾側で変わる)。さらに、上記fate mapの作成などから、登上線維神経細胞は尾側後脳のPtflaを発現する神経上皮由来であるということがわかった。これによって、登上繊維神経細胞の正確なオリジンが初めて同定された。それに対して、小脳皮質からの逆行性ラベルにより同定された苔状線維神経細胞は、Ptflaを発現する神経上皮由来の細胞を全く含まないことがわかった。次に、胎生期における観察から、未成熟な登上線維神経細胞がPtflaを発現する神経上皮から生み出され、回り込むように腹側へと移動し、胎生期13日以降に下オリーブ核を形成することがわかった。Ptflaヌル変異体では、未成熟な登上線維神経細胞はPtflaを発現する神経上皮からある程度生み出される。しかしながら、正常な登上繊維神経細胞へと分化できず、さらには腹側へと移動できないことが観察された。また、それらの細胞が移動できずに留まっNgn1ている領域で、アポトーシスを示す細胞が多く観察された。以上の結果から、Ptflaが登上繊維神経細胞の生存、分化、移動に関与しているということが示唆された。また、Ptflaヌル変異体では、Ptflaを発現する神経上皮由来の細胞の一部が、橋核などにおける苔状繊維神経細胞へと運命転換していることが観察された。これは、Ptflaがcell fateの決定にも関与しているということを示唆している
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