研究課題/領域番号 |
18022031
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石原 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (10249948)
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研究分担者 |
古賀 誠人 九州大学, 理学研究院, 助教授 (60243888)
藤原 学 九州大学, 理学研究院, 助手 (70359933)
広津 崇亮 九州大学, 理学研究院, 助手 (70404035)
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キーワード | 学習 / 脳 / 神経回路 / 記憶 / 情報処理 / 行動 / 線虫 / 遺伝学 |
研究概要 |
動物は、外界から同時に受容した様々な情報を、中枢神経系において取捨選択・統合した上で、適切に情報処理を行い行動している。我々は、このような情報処理のメカニズムを、線虫C.elegansをモデルとして解析している。 感覚情報の統合は、「2つの入力から1つの出力」という最も単純な情報処理の1つである。我々は、分泌タンパク質HEN-1と受容体チロシンキナーゼSCD-2からなるシグナル経路が、線虫の神経回路において感覚情報の統合を制御していることを明らかにしてきた。このHEN-1/SCD-2シグナル経路は、NaClと飢餓の条件付けによる一種の連合学習にも異常があることから、記憶の形成過程などにおける情報の統合にも関与していると考えられた。そこで、このような感覚情報の統合に関与する新たな分子を探索する目的で、忌避物質銅イオンと誘引性匂い物質ジアセチルを用いた感覚情報の統合に異常がある変異体のスクリーニングを行った。その結果、膜貫通型グアニル酸シクラーゼをコードする遺伝子にトランスポゾン挿入がある変異体を同定した。この変異体は、銅イオンやジアセチルに対する応答には異常はないが、同時に刺激した際に行動に異常を示すことから、感覚情報の統合に異常があると考えられた。 そこで、我々は、線虫C.elegansを用いて、短期記憶の消去の分子メカニズムを明らかにする目的で、「記憶を忘れない」変異体の分子遺伝学的解析を開始した。線虫は、高濃度のジアセチルに対する順応をモデルとして、そこで、ジアセチルに対する応答や順応には異常はないが、順応からの回復が見られない変異体を探索した。その結果、ジアセチルがない条件で8時間飼育しても、依然としてジアセチルに対して順応している変異体を単離した。この変異体では、ジアセチルに対する順応が長期記憶に変化している可能性も考えられた。
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