Chromophore-assisted laser inactivation(CALI)は、生細胞における蛋白質の機能を時空間的に阻害する方法である。しかし、色素を抗体に結合させて行う従来のCALI法は、手技の煩雑さや非特異的不活性化の間題があり、普及していない。 これまでわれわれは、多光子励起を用いることによって、EGFP融合蛋白質をCALIのターゲット蛋白質とする多光子CALIを開発し、connexinの機能を時空間選択的に阻害できることを示した。本年度は、多光子CALIにより、他の蛋白質の阻害も可能であることを示すため、aurora Bを対象として実験を行った。 MDCK細胞にaurora B-EGFP遺伝子をトランスフェクトした。12時間後に、チミジンブロックによって、細胞周期を同調させた。15時間後にチミジンを除去し、6-7時間後に細胞分裂中期にある細胞に対して、多光子CALI実験を行い、実験後30分間、細胞分裂の進行を観察した。 多光子MALI実験前には、細胞分裂中期にあるaurora B-EGFPを発現させたMDCK細胞では、aurora B-EGFPは赤道面上に局在していた。aurora B-EGFPにフェムト秒レーザーを照射すると、照射部位のaurora B-EGFPが退色し、染色体の凝集が観察された。aurora B-EGFPに対して、多光子CALIを行った細胞16個中14個では、多光子CALI実験30分後でも、分裂極への染色体の分離が起らず、細胞分裂の進行が阻害された。一方、aurora B-EGFPをトランスフェクトしていない細胞では、分裂中期の赤道面に同様のレーザー照射を行っても、30分後には細胞分裂の進行が観察された(13/13)。以上より、ギャッブ結合蛋白質以外でも、多光子CALIによる生細胞内での蛋白質機能の時空間選択的阻害が可能であることが明らかとなった。
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