研究課題
記憶固定化には、ニューロンにおける新規遺伝子発現が必要不可欠であり、特に転写調節因子CREBによる転写調節の重要性が示唆されている。本研究では、CREBによる記憶固定化制御の分子機構の全体像を明らかにすることを目的として、研究を進めた。(1)記憶固定化に対するCREBの機能的役割CREB情報伝達経路の増強によって記憶固定化能力が向上するのではないかと考え、CREBの活性型変異体群を前脳領域特異的に過剰発現するマウスを作製・解析して、この仮説を検討した。その結果、変異マウスでは、Long-term potentiation (LTP)の増強、さらに、記憶形成能力の向上が観察された。以上の結果から、CREBが長期記憶の「強弱」を決定するmolecular switchとして機能するのではないかと考察した。(2)記憶形成時のCREBの活性化制御機構の解析CREB活性化の指標となる133番目のセリン(S133)をリン酸化するキナーゼ群の一つであるCaMKIVに着目し、野生型CaMKIV過剰発現マウスを作製・解析した。その結果、変異マウスでは、リン酸化CREBのレベルの上昇、また、記憶固定化能力の向上が観察され、CaMKIVがCREBのS133のリン酸化を介して記憶能力を正に制御することが強く示唆された。さらに、CaMKIV過剰発現マウスでは加齢に伴う記憶固定化能力の低下が観察されなかった。以上の結果から、CaMKIV-CREB情報伝達経路を操作することで記憶能力を向上させる、また、加齢や精神疾患による記憶能力減退を妨げる可能性を提示できたと考えている。(3)クロマチンリモデリングによる記憶形成制御機構の解析恐怖条件付け文脈学習課題を用いて、ピストン修飾阻害剤を用いた解析から、ピストン修飾によるクロマチンリモデリングの記憶固定化に対する重要性を示唆した。
すべて 2007 2006 その他
すべて 雑誌論文 (7件)
Biosci. Biotechnol. Biochem. 71
ページ: 840-843
Learn. Mem. 13
ページ: 451-457
Pathobiology. 73
ページ: 1-7
J. Biol. Chem. 281
ページ: 20427-20439
Genes Brain Behav. 5
ページ: 96-106
Brain Res. (in press)
Mol. Pain. (in press)