P2X受容体は細胞外ATPによって活性化されるリガンド作動性の非選択性陽イオンチャネルで、2回膜貫通型のサブユニットの3量体であることが明らかにされている。2つの膜貫通部位には、膜電位センサ-と考えられるような電荷を有するアミノ酸残基のクラスタ-はないため、膜電位依存性を持つチャネルとは認識されていない。今年度、ツメガエル卵母細胞を発現系として用い、2本刺し膜電位固定下で、ATP投与後の定常状態におけるP2X_2チャネル電流と膜電位との関係を定量的に解析した。 脱分極電位から過分極電位へのパルス刺激を与えた時、チャネルポアの持つ内向き整流性による瞬時の電流レベルの変化に加え、緩徐な内向き電流の活性化相が見られた。この活性化は、より高い脱分極電位に、より長く保持した時に、より顕著にみられた。このことから、膜電位に依存したゲート機構が存在し、過分極電位で開きやすいことが明らかになった。この活性化相は細胞外のATP濃度に依存性を示し、ATP濃度が低い時は活性化が遅く高い時は速かった。すなわち、ATP投与後の定常状態において、P2X_2チャネルは膜電位とATP濃度に依存する"ゲート"機構を持つことが新たに示された。 現時点では、膜電位とATP濃度に依存して、Gly残基における折れ曲がりとチャネルの活性化が起こる機構の詳細は明らかではないが、ATPは負電荷を帯びているため、ATPの結合自体に膜電位依存性がある可能性が考えられる。また、膜貫通部位にごく少数存在する電荷を帯びたアミノ酸残基が、膜電位を感知している可能性も残る。そこで、今後、ATP結合部位、および、膜貫通部位のアミノ酸残基を変異させた変異体の機能を解析することにより、可能性の検証を進める計画である。
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