研究概要 |
Fez(Fezf1),Fez-like(Fezl,Fezf2)は、中枢神経前部で発現する転写抑制型ジンクフィンガー蛋白をコードする遺伝子である。マウスの発生においては、Fez,Fezlは、それぞれ胎生8及び8.5日より前脳の重複した領域に発現し、胎生中期には視床下部・前視床などの共通部分に加えて、Fezは嗅神経にFezlは大脳皮質深層にといった特異的発現を示す。 我々はノックアウトマウスを用いた解析から、(1)嗅神経に発現したFezが、細胞自律的に嗅神経の軸索伸長を制御し、細胞非自律的に嗅球の層構造・介在神経および前駆体の運動を制御していること、(2)Fez,Fezlが間脳前方(前視床)で発現し、間脳後方の運命決定を抑制することにより間脳の前後パターニングを制御していること、を明らかにした。 Fez,Fezlの上記の様な機能を発揮する分子機構を理解するため、(1)Fez,Fezlが前脳あるいは領域特異的に発現する分子機i構、(2)Fez,Fezlが制御する遺伝子の解析を行った。Fezl染色体遺伝子の蛋白コーディング領域上流8.2kbp(1st intronを含む)をbeta-galactosidase遺伝子と結合させた、リポーター遺伝子を用いたトランスジェニックマウスを作成し、胎生8.5日の内在性のFezlの発現を再現することが出来た。この8.2kbpの欠失変異体を作成しEnhancer領域を詳細に解析したところ、開始コドン2kbp上流付近にある35bpの領域が、前脳での発現に重要な役割を演じていることを見出した。また、Fez,Fezlダブル欠損胚(胎生9.5,10.5,12.5日胚)の中枢神経前部で、野生型胚と比較し、発現の増加・低下した遺伝子の検索をGene chipを用いて行った。
|