神経細胞内封入体が各種の神経変性疾患の組織病理学的所見として多く報告されており、封入体は異常構造をとったタンパク質であることが報告されている。病理組織学的検索によりこれらの封入体を構成するタンパク質の多くがユビキチン化というタンパク質分解のための修飾が起きていることが知られている。申請者は分子シャペロンと相互作用しているユビキチンリガーゼ群としてU-ボックスタンパク質を同定している。このユビキチンリガーゼは分子シャペロンを基質認識サブユニットとして働いていることが推測されている。本研究では、封入体構成タンパク質の安定性を調節するメカニズムとして分子シャペロン系とユビキチン-プロテアソーム系がどのような役割を果たしているのかを検討する。特に、封入体構成タンパク質をユビキチン化させる酵素系であるU-ボックスタンパク質との関係を生化学的に明らかにすることを目的とする。 U-ボックスタンパク質は4つ以上のポリユビキチン鎖を基質に伸長させるE4(Ufd2)として、出芽酵母の人工基質の分解システムの解析から同定された。Ufd2のC末端に存在する約70アミノ酸配列(U-ボックスドメイン)を有するタンパク質は、酵母からヒトに至るまで、各々の生物種ヒ複数存在することが判明し、我々はヒト及びマウスからU-ボックスドメインを含むタンパク質のcDNAをクローニングし、そのE3活性を証明した(U-ボックス型E3)。ほとんどのU-ボックスタンパク質は分子シャペロンとの関係が認められ、U-ボックス型E3はシャペロン依存型E3である可能性が高いことが判明した。 また、マウスUfd2aはNmana1遺伝子と融合タンパク質(Wld^s)を形成することにより、軸索変性を遅延させることが知られている。特に本研究では、神経軸索形成モデル細胞を使って軸索変性を遅延させる原因部分を明らかにした。
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