研究課題/領域番号 |
18023004
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福島 順子 北海道大学, 医学部, 教授 (40208939)
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研究分担者 |
宮本 環 北海道大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (20271679)
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キーワード | 自閉症 / アスペルガー症候群 / PDD / アンチサッカード / 記憶によるサッカード / smooth pusuit / 眼球運動 |
研究概要 |
広汎性発達障害の診断基準は、DSM-IVなどによる症状からの診断法に頼っており、検査所見などによる診断法は未だ確立されていない。また、その病因について遺伝学的研究が行われているが、それがどのような脳機能の障害として発現するのかについては未だ明らかではない。 本研究の目的は、高機能自閉症、アスペルガー症候群の小児例、成人例と健常対照群に種々の眼球運動課題を行ってその結果を比較し、特徴的所見を抽出することと、障害の性質とその候補となる脳領域を推定することである。 小児例では6-14歳、成人例では20-35歳の高機能自閉症者11名、アスペルガー症候群7名の計18名と年齢をマッチさせた健常者18名に赤外線吸光度を利用した眼球運動記録装置を用いてsaccade系とpursuit系の眼球運動課題を行った。 広汎性発達障害群(PDD)では、アンチサッカードの視標を見てしまうエラー、垂直smooth pursuitにおけるゲインの低下、潜時の延長であった。これらの異常は、saccade系とpursuit系ともに見られ、両者の成績に相関が見られた。 最近、MRIや死後脳の研究から、自閉症脳の前頭葉背外側部、及び内側部の容積が異常に大きく細胞の配列が乱れていること、病理組織学的にグリア細胞の増殖が前頭葉の前述の部位と小脳にみられることが、報告され(Vargas 2004)、また、前頭葉と他の大脳皮質を結ぶ線維の形成不全が指摘されている(Courchesne 2005)。今回の眼球運動の結果は、前頭葉眼球運動関連領域の機能障害として説明可能であると考えられる。
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