研究概要 |
統合失調症の発症は遺伝的な影響を強く受けるが遺伝的な影響のみでは発症には至らず、エピジェネティクな要因も重要な役割を果たしていると推測されている。統合失調症の分子病態を把握するためにはジェネティク、エピジェネティクの両者をともに解析する必要がある。すでに進行しつつあるジェネティクなデータに加えて、エピジェネティクな遺伝子変化を来す遺伝子を網羅的に同定し、統合失調症の疾患パスウェイを解明することを目的とした。 そのため、連鎖236家系602人、TDT171家系,548人、症例・対照4,183人、死後脳は統合失調症98、対照24(Brodmann area 9)のデータを使用した。ゲノムワイド関連解析、遺伝子発現はイルミナ社のシステム、およびTaqMan reatime PCR法を使った。またThe Stanley Medical Research Institute Online Genomics Databaseも参考にした。対立遺伝子特異的発現解析はSNapShot法を使用した。研究は筑波大学および共同研究機関のヒトゲノム・遺伝子解析研究のための倫理委員会の承認を受けて行われた。 その結果、ゲノムワイド関連解析により5遺伝子が、また、発現解析からは2遺伝子が、エピジェネティックな制御による統合失調症と関連する1遺伝子が同定された。これらの遺伝子のパスウエイ解析を行ったところ、もっとも遺伝子関連の強い遺伝子のコードしている分子がもっとも多くの関連遺伝子と直接パスウエイを作っており、鍵遺伝子である可能性が示された。この遺伝子はStanleyのデータベースでも遺伝子発現解析の差が見られている遺伝子であった。このパスウエイは特にドーパミンシグナル伝達系に関わっている可能性が示された。また、エピジェネティックな機序にも関わっている可能性がある遺伝子であった。 本研究では統合失調症に関連するジェネティック、エピジェネティクな機構にともに関わる鍵遺伝子を同定した。
|