研究概要 |
脊髄小脳変性症10型(SCA10)はその変異がイントロン領域にある優性遺伝性リピート病であり、その伸長リピートがRNAレベルで病態を起こしていることが推察されているが、その機構は未だ不明である。ここでは原点に立ち返り、その変異RNA局在を詳細に解析することで、伸長リピートRNAの代謝過程とその病態メカニズムを推察した。研究代表者らは転写がATTCTリピート伸長を超えて進行していることを示し(Neurology 2006)、SCA10リンパ芽球を用いたRNA-FISHで核内AUUCU封入体検出に成功している。その核内局在をより明らかにするため、(i)免疫蛍光法(IF)を組み合わせ、核膜(抗Lamin B1抗体)、核小体(抗nucleolin抗体)、PML小体(抗PML抗体)、Cajal小体(抗Coilin抗体)、スペックル(抗SC35抗体)等との共局在をFISH-IFにより共焦点レーザー顕微鏡で観察した。一般的にイントロンRNA分解は、スプライシング後、核内エクソソームで行なわれるとされるが、スプライソソーム・エクソソーム等の機能的分子複合体との共局在と、更にRNA封入体に含まれるpre-mRNA代謝とその成分を明らかにする目的で(ii)同じイントロンにある他の部位と両側エクソンにプローブ設定し、AUUCU封入体との共局在をRNA-FISH(cy3-AGAAT probe,FITC-intron/exon probe)で検討した。 1.AUUCU封入体は、傍核小体に存在した。CUGBP1,PTBP1等のスプライシング因子とも共局在した。 2.AUUCU封入体は、同じイントロンにある他の部位と共存しない。このことは伸長したAUUCUがRNA分解を免れ、ほぼAUUCUのみが核内に蓄積することを示している。 3.他の非翻訳リピート病である筋強直性ジストロフィーのCUG,CCUG封入体との核内局在が異なった。
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