研究課題
スコットランドの1家系において1番染色体と11番染色体の転座が起きており、高率に統合失調症、うつ病、躁鬱病といった疾患を発症すること、その転座領域にDISC1遺伝子がコードされていることが報告された。そこで我々は、DISC1転座部位を中心に結合する蛋白質が生理的に重要な役割を持っており、転座が起きた結果、DISC1との結合が阻害され、神経細胞に必要な生理的機能が障害され、統合失調症等の精神疾患を引き起こすのではないかと仮説を立てた。そこで我々は、DISC1転座部位の配列を用いてyeast-two-hybridスクリーニングを行い、DISC1結合蛋白質として、Fasciculation and Elongation protein zeta-1(Fez1)、KENDRIN、DISC1-binding Zinc finer protein(DBZ)の3つを同定した。本研究課題である、DISC1/FEZ1結合およびDISC1/DBZ結合の持つ意味を明らかにする第一歩として、各々の相互作用が神経細胞の突起進展に対する作用を検討した。その結果、1)NGFによりDISC1/FEZ1のinteractionが増強し、突起進展が促進されること、2)PACAP刺激により、DISC1がDBZから乖離し、乖離したDISC1が作用することで突起進展が促進されること、を見出した。以上の事実は、統合失調症患者脳ではこれら結合因子とDISC1の相互作用が阻害されることで、発達期におけるDISC1の機能が障害され、神経ネットワークの異常を引き起こす可能性を示唆している。今後は、胎生期でのニューロンの発達と成熟におけるDBZ/Fez1の機能を明らかにすること、DBZ/Fez1遺伝子欠損マウスが統合失調症のモデル動物になりうるか否かを検討することで、統合失調症の病態解明につなげたいと考えている。
すべて 2007
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Mol Psychiatry. (in press)